七月十二日(火)・終わりを決めて書こう
        お題:おれたちの戦いは始まったばかりだ!
作者:人造バター




梅雨時には珍しい、からりと乾いた日が、土手を薄オレンジに染めていた。
 その光の中に、二人の少女が並んで腰を下ろしている。揃いの制服は、彼女達が中学生であることを物語っていた。
「かな子ちゃん・・・・・・、やっぱり駄目だったね」
 左側に座る小柄な少女がつぶやく。
「・・・・・・納得がいかないわ」
 隣の少女は不服そうに返した。黒目勝ちの瞳は今は閉じられている。
「ねぇすみれ、おかしいと思わない? 何故先生も親も、あんなに反対するのかしら」
 尋ねられた少女は、真っ直ぐな視線から顔を背ける。
「・・・・・・そ、それは・・・・・・」
 言いよどむ様子は、どこか恥らっているようだ。それに気づいていないのか、かな子は続ける。
「だってこんなに好きなのに」
 すみれはその言葉に、ハッと顔を上げる。いつのまにか立ち上がっていたかな子は、全身に夕日を浴び、前を見つめている。
「そうよ、やっぱり私達間違ってない。だって私大好きだもの。すみれがっ・・・・・・」
 見上げる少女は息をのむ。
「かな子ちゃん・・・・・・」
「すみれが描く漫画がっ!!」
 潔い程きっぱり叫んだかな子は、挑むように夕日を睨んだ。
「すみれっ、やっぱり漫研つくりましょう。絶対にあきらめないわ。誰が何て言ったって」
 すみれは、その熱意に圧倒され、思わず頷く。するとかな子は無邪気に破顔した。
「すみれ、頑張りましょう。そしていつか私達のことを漫画にしましょうよ! そうね、タイトルはこんな感じでどうかしら。『おれたちのたたかいはまだはじまったばかりだ』」

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