六月十四日(火)・プロットから小説を書こう
        お題:ももたろう
作者:kuma




 そう遠くない未来・・・・・・世界は“情報”が全てになっていた。人としての最低限の能力は読み書きではなく、パソコンを扱えることであり、ハッキング技術がその人の価値を決める“力”となりつつあった。
 そのように世界を動かしたのが、ハッキングチーム“鬼が島”――そのリーダーである“鬼”である。その卓越した技術により、全世界のありとあらゆる情報を“鬼が島”が掌握。世界の行き先は、“鬼”が握っていると言っても過言ではなかった。
 そんあある日――
「あら?」
 六十を過ぎた女性が、ネットサーフィングをしていた時、おかしな一通のメールが届く。
 そのメールの宛先は不明。ただ件名に“桃”とだけ書かれていた。女性は、不穏にに思いつつも、メールを開く。そこにはたった一言だけ書かれていた。
 ――“鬼が島”を討伐しませんか? と。
 女性は背筋を凍らせた。何故なら、ついニ週間程前、女性が経営している会社の機密データを“鬼が島”に奪われ、どうにかして取り戻せないものかと打算していたところだったからだ。
 しかし、相手はあの“鬼が島”どんな手を使おうと奪取出来るはずもなく、時が過ぎて行くばかり。そこにこの怪しいメールだ。寒気を覚えずにはいられなかった。
(いたずらだ。そうに違いない)
 そう自分に言い聞かせている時にもう一通のメールが。
 ビクッと肩を震わせて、おそるおそるメールを開く。それを見て、女性は唾を飲んだ。『大丈夫。あなたは一人ではありません。お供に“猿”、“犬”、“雉”という優秀なハッカーを付けましょう。あなたは彼らに命令だけすればいいのです。それだけであなたの大事なデータは戻ってきますよ』
 そんな甘言に、次第に女性は目が離せなくなり。
 ――何をすればいいですか?
 そう返信するのだった。


*   *    *


 その一ヵ月後――
 結果的に“鬼が島”は消滅。“鬼”は世間から抹消され、機密データは戻ってきた。
 女性が経営する会社“村”は何事もなく大成功し、女性は巨大な富を手にいれた。
(あのメールは何だったんだろう?)
 会社のビルの最上階から待ちを見下ろしながら、突然やってきたメールを思い出す。
 丁度そんな時、パソコンから、メールの着信音が。
 何かと思い、メールを開けて見ると件名には桃。そして本文には――
『あなたの財産、いただきました』
 そう書いてあった。
 女性が慌てて、会社の重要データの入ったフォルダを開いて見ると、デスクトップに“桃太郎”の文字が表示されるのであった。


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