CRS




「お前、なんで羽生えとんねん?」

「や……別に……なんとなーく生やしてみようかなーと……」

「いらんやん。はずしいや。邪魔や」

「いいじゃん。気にいってんだからさー」

 ――ここは秩序のない世界。とりあえず人がいて、動物やら植物やらがいるが、そんなものどうにでも変えられるし、消

すことも作り直すこともできる。人間は毎日やりたい放題。別段何の悩みもない結構楽しい生活を送っていた。世界は平

和で争いはなく、その代わりいつも別の意味で天変地異が絶えなかった(平和なのか?)――

 ジュリ子は毎朝、その日の気分で色々なオブジェを生み出し、それをつけて学校へ行くのだった。ワニのかぶりもの、ク

ジャクの羽の帽子、バズーカ砲、ゾウのジョウロ型のヘルメット等々。一方、クラスメイトのロミ男はそういうことに一切興

味を持たない、こちらの世界では一風変わった、普通のもの、平凡でノーマルなもの、自然なものが好きな男の子だっ

た。

 今朝、ジュリ子は真っ白い大きな羽を背中につけて登校した。とはいっても他の子とちょっとセンスがズレることがよく

ある。今朝の羽も、アイデアまでは良かったのだが……。

「デカすぎるんじゃボケー! 自転車乗ってる人通られへんやんけ!」

「だってこれくらい大きくなきゃ空飛べないんだもん」

「お前体重何キロや? 200キロぐらいあるんちゃうか?」

「失礼なこと言わないでよ! そんなにないよ!」

 ロミ男は高くケラケラと笑った。それにつられてジュリ子もワライカワセミのようにキリキリと笑った。ジュリ子は笑い方も

変なのだ。



「今日は風が吹いてないから、羽を大きくしなきゃとべないの」

「ホウ……確かに風吹いてへんなぁ。なんや、こんな日はブルーになってまうわ。ワイは風が好きなんじゃーい!」いった

いどこ出身?という疑問を残しつつ、ロミ男は空を眺めた――



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