空が赤い
琵琶アンド錆




 ううむ、なぜ今日の空は真っ赤なのだ、真昼だというのに、空めが歯槽膿漏で出血しておるというわけでもないのに、

気味が悪いわ、空の分際で俺の気分を害するようなことをしおって、酒でも飲まんとやりきれんわ。 おお、ちょうどいい

ところにるんぺんがおるな、酒も持っておるぞ、よし、おい貴様、その酒をよこせ、なに、なぜだと、酒が飲みたいからに

決まっておるではないか、ぐだぐだぬかさずよこせ、ほう、そうか、どうしてもよこさんつもか、なら力づくで奪ってやるわ、

ぐっ、貴様卑怯だぞ、飛び道具を使いやがって、ぐはぁ、待て、分かった、分かったから許してくれ、   ああ、死ぬところ

であったわ、くそう、このままではくたばってしまうではないか、くたばっては酒は飲めんではないか、酒が飲めんと空の

気味の悪さがなんともならんではないか、そんな後味の悪い死に方はごめんだ、畜生、なにか気分がよくなることはない

のか、  そうだ、女だ、女がいればまだいくらかはましだ、女、女はどこだ、 ええい、どこにも女など落ちておらんでは

ないか、 ああ、そういえば昨日土手に女が埋まっておったな、よし、あの女をいただこう。  おお、まだ埋まったまま

だ、こいつはいい、さっそく掘り起こそう、  ん、なに、私を掘り出すなだと、なぜだ、なに、土に還りたいからだと、なぜ

土に還るのだ、   ふうむ、土に還れば嫌なことなど何もないからか、なるほど言われてみればそうだ。 なぜ気づかな

かったのだ。 よし、俺も土に還ろう。  いや、待てよ、女と一緒に土に還るのもしゃくだな、なら俺は空に還るか。 お

お、本当に嫌なことなどまったくないぞ。最初からこうしておけばよかったのだ。うむ、よかった よかった。



inserted by FC2 system