汚水
CRS




『午前3時』



眠れないから死にたい

抑えつけられた言動

僕は詩人でなくなった



君がいなくなってから

僕の生活はロックになった

頭の中に響く文句

頭の中を巡る音律

侵される精神

続く悪夢

興奮剤をこの腕に

発狂剤をこの耳に



頭の中で回っている

君と手をつないで

体をズタズタにして

失ったものを全て詰め込んだ

砂時計をひっくり返して

君と回る

地獄の景色



君がいないから

生活なんてヘドのようだ

ダメ人間は一人で立てない

早く死にたい

早く消えたい

僕は詩人でなくなった!





『どんぐりと袋』



君は袋からどんぐりを取り出し

僕の袋に次々と入れる

でも僕の袋には穴が空いていて

どんぐりはボロボロこぼれてゆく

こぼれたどんぐりを君は拾って

また僕の袋に入れる

僕の足下はどんぐりで埋まる



「袋に穴が空いているんだ」

君は耳を貸さない

僕がどんぐりを君の袋に入れようとしても

君は袋の口を固く閉じて

僕の袋にどんぐりを入れ続ける



僕は袋の穴を押さえて

君のどんぐりを溜め込んだ

手は傷だらけ

君の袋は空っぽになる

そこでやっと君は止まる

「逃げてもいいよ」と君は言う



君の袋は破れやすくて

ろくに何も入れられない

それはわかっているが

僕は袋を破り捨てたい



「逃げてもいいよ」と君は言う

どんぐりだらけの袋を抱え

新しい袋を僕は探す

穴を縫い合わす糸を探す

手の傷の毒を吸い出し、吐く





『汚水』



あの工場は運営中止になったよ

精神病の経営者は麻薬を吸い尽くして

もう幻覚も見えなくなったってさ



何も生み出せない苦しみ

動けずにいる窒息感



工場の周りに蛇が一匹

噛まれた経営者は重症だってさ



造り出した製品は時代遅れなんだ

浮かんだアイデアは大して変わらない



烏の群がる廃業工場

汚水だけが流れている



業績不振

経営赤字

意識不明でベッドの上

汚水だけが流れている





『白獣』



生ぬるい空気

眩しい電灯

空調の音

夕映えの窓

その中で

僕の目の前を白獣が泳ぐ

これまでの雑事を拭き消してゆく



月は満ちた後再び欠けてゆく

僕もそうらしい

花のない世界に飛び込んだ蝶

僕もそうらしい



けれど

人が生きているのと

木が風にそよぐのと

同じことだ

そう思ったら

僕の目の中に白獣が住みついた





『――』



僕の気持ちは

いつも通じない

君が側にいたって

結局僕は一人だ



そして今日も君の叱りを受ける

気持ちを偽り僕は謝る

親しむ

微笑む……





『白い壁』



君がいない白い壁に

安堵を感じる一瞬

曇り空

暗い部屋

小さなヒーターで暖をとる

君がいない

白い壁

静けさという平和を呼吸して

解放された囚人のように

僕はうなだれた





『横』



あなたは

僕の横を歩いた

その瞬間に

僕は感情を殺した

あなたは僕の横を歩いた

確かにその時



それで十分といえば十分だ

足りないといえば足りない

僕の言葉はまるでろうとだ

少しずつ、時間をかけてしかものを言えない



あなたは僕の横を歩いた

気の遠くなるずっと先に

意識が消えたずっとまた先に

あなたよ僕の横を歩け



あの瞬間

僕は感情を殺した

でもあなたは

確かに隣にいた



これから先に

どんなにお互い苦しんでも

あの瞬間

あなたは僕の横にいた



また繰り返せたらいいのに





『生活』



生きるのに疲れてずっと寝ていた

経過する時計を見つめ

異常に早く終わる毎日を思い

流れる音楽と重苦しい空気に

死んでいる自分を発見した僕は

ふいに叫んだ

「イキロ!」



無気力、挫折、失望、悲嘆

みんな飽きた!

苦しみ、矛盾、疑い、すれ違い

飽きちまったよもう!



僕は自分に腹を立てて

起き上がって生活を始めた

午前零時!





『質問』



目が見えないのや

手足がないのと同じように

生きようという気持ちがない人は

どうすればいいのだろう?



見たくても見れない

つかみたくても走りたくてもできない

生きたいと思いたくても思えない

どうしたらいいのだろう?



働くのもこんなに苦しい

生活を送るのもこんなに苦しい

やる気のない世界で

何を喜べばいいのだろう?



勉強しろと言う前に

金を稼げと言う前に

戦争を止めろと言う前に

答えてくれよ先生



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