ミチクサ
星先ひとで




 私の部屋に道草が生えてきたんです。どう説明したらいいんでしょう。その草はとても奇妙で滑稽な姿をしています。私

の恐怖心と好奇心を、同時にくすぐるんです。ええもう、笑いが止まらないくらい。

 そんな私をみたカエルの王様がこう言うんです。「いっぱい道草をしたらええ。あんたの好きなように、いろんなトコを歩

いてみたらええ」

 それ以来二十年間、あっちこっちの道草を旅しています。道草には数え切れないほどの種類があるんです。それぞれ

に楽しいこともあり、つらいこともあり、無駄に思えることもあり。私はついに歩き疲れて、途方にくれて、根っこにしゃがん

でしまいました。「道草ばかりしてて、本当の私の道が分からなくなっちゃった」

 泣いている私の背中を押したのは、小さなピンクの手乗りゾウでした。一生懸命、その小さな長い鼻で押しています。

なんだかくすぐったくて、初めて部屋に道草が生えてきた時のことを思い出しました。カエルの王様のことも。

 ――ああ。「道草は、私の道なんだ」

 立ち上がって振り返ると、一本の道があります。たった一本の、私だけの道です。そして目の前には、草ボウボウの未

開拓地。私は、再び不器用に歩き始めます。転んでも、つまづいても、泥だらけになってもいいと思いました。全部無駄

なんかじゃないんですね? いっぱい道草して、私らしい道を拓いていきましょうか。



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