おもちゃのチャチャチャ
星先ひとで




 真夜中になると動き出すもの。

 僕の部屋のぬいぐるみ。

 片耳が曲がったままのウサギに、

 お腹を押すとゲロゲロ鳴くカエル。

 お風呂の友達アヒル隊長。

 アニメのキャラクター人形とか。

 奴らは僕の寝息を確かめる。

 僕の耳をひっぱる奴もいる。こそぐったい。

 僕はおかしくって笑い出しそうになるのをこらえて、

 いっしょうけんめい寝たふりをする。

 僕が寝てることを確かめると、

 ぬいぐるみたちは宴会を始めるハズだから。

 ――僕が飛び起きてびっくりさせてやろう。

 その時の彼らの表情を想像するだけで、

 僕の口は不自然に曲がってしまう。

 ――もう少し、もう少し。せぇのっ。

「わっ」



 そこにいるのは。



 よれよれのスーツとゆるんだネクタイで、二日酔いの駄目な俺。

 俺の耳たぶをつかんだまま寝ているのは、今年3歳になる俺の娘。

 たまにはぬいぐるみでも買ってやろうか。



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