人それぞれ 風向き
プールで泳ぐ彼女を見ているのが好きだった……
恋愛感情とか、そんなのとは違う感情。
俺は今、受験勉強に励んでいる。彼女は泳ぎ続けている。彼女は水泳の推薦で大学を受験するらしい。俺にも推薦で大学を目指せるだけの頭や運動能力があればなあ。どれも中途半端な俺には彼女のような推薦の話は夢のような話だ。きっと泳いでいる彼女を見るのが好きなのも、憧れとかうらやましさとか、そういう感情からなのだろう。
「良いよなあ、勉強やらずに大学いけて。」
どんなにうらやましく思っても、所詮人は人、自分は自分だ。
「さーてと、勉強しますか。」
ひとつ伸びをしてから、その場をあとにした。
一瞬、彼女の方を振り返ってから――
春、俺は見事、大学に合格することができた。必死(?)に勉強した成果だろう。ちなみに彼女は水泳での推薦をやめ、一般の入試で大学に入ったらしい。それを聞いた俺は、本当に人は人だな、と改めて感じた。