『 箱 』



華美な装飾の箱をあけてみる

中は暗くてよく見えない



いったい中はどうなっているのだろう

何が入っているのだろう



箱の中にはただ一回り小さい箱が入っていただけだった

それはずいぶん質素なものだった



なんとなく触れ難い感じのする箱

僕は躊躇した

今度のはあけても平気なんだろうか?

触れてはいけないんじゃないか、と



ただ、箱は『触って、開けて』と僕に訴えているように見える

触れようとして、手を止めて……

目を閉じ、そして初めにあけた華美な箱の中へ封じ込めた

見てはいけない気がした

見なきゃいけない気がした



僕の心の中のパンドラの箱

華美な装飾に包まれた箱の中にある粗末な箱



ボクのパンドラの箱、希望は入っているの?





『願』



人は普通からの脱却を願う

それぞれの方法で



若かりし日に髪を染めてみたり

同じく若かりし日にタバコを吸い、格好つけてみたり

アニメにハマり、違う世界に行ってみたり

格闘マンガや不良マンガを読んで強気になってみたり

自分をドラマの主人公にあてはめてみたり



自ら願っていないつもりでも、心のどこかにそれはある




もがく、もがく、もがく…




年をとり、自分はこうなるはずじゃなかったと思う



理想とのギャップに悩む



いつしか別の考えが頭をよぎる

「あぁ、夢はこうして終わるんだ…」

「こんな仕事でもないよりマシか…」

「結婚してパートしながら住宅ローン払っていくんだな…」

「普通に……」



そして、こう思う

「普通っていい事じゃないか」

「普通が一番…」




ねじ曲げられた思考

歪曲された夢、捨てられた子供の頃の夢



思い出すと悲しいこの思いは、いつしか記憶の彼方へ消えていく



夢を、願いをかなえられた人はどれだけいるのだろう





『もう君と会えない』





高校3年、最後の夏

あの輝かしい時は永遠に戻らない



白球に消えた、3年間の想い



嬉しさ、誇らしさ、悲しさ、辛さ、そして悔しさ




もうこの場所で君を見ることはない

涙の中、砂を集める



永遠の思い出



掌から零れ落ちていく時を集める



そう、彼らは確かにいたのだ

この光溢れる場所に

青春の輝きを残した




もう君と会えない




世界がにじむ

友と過ごしたこの瞬間が終わった

時を脳裏に焼きつけようとするが上手くいかない

熱い、熱い夏が終わった

もっとみんなといたかった

叶うことのない想い




もう君と会えない……



inserted by FC2 system