Tokyo N◎VA The Detonation 「A thistle」
Climax2 You have to be by me
SP:道杓
シーンタロット:歌舞伎(逆) 非常識
なんとかアザミに追い着き、トキのウォーカーでオービタルベース『Garden』までやってきた。その内部では、無数のヴィークルと全身義体がひしめきあっていた。
すぐにこのオービタルベースのマップを検索する。すると、一番奥の部屋に、アザミのデータ処理を出来るだけの容量を持ったギガトロンを発見した。
綾部トキ:「ここなんだな、タオ?」
道杓:「うん」
RL:ギガトロンの内部、中心のモニターに眠っているアザミの映像が映し出されている。現在、リプログラムの侵攻状況は30パーセント。
綾部トキ:間に合ったのか? これからどうすれば?
RL:そして周辺のモニターには、今までアザミが体験した出来事が映っている。父親殺し、ヴィークルでの襲撃、N◎VA軍部隊の壊滅――そして杓との日々。
綾部トキ:残っていたのか、よかったな。
RL:有効だと認識されたのかもしれない。もしくは、アザミの心“Ghost”が失くしたくないと願ったのかもしれない。
綾部トキ:「アンタの顔がでっかく映し出されているぜ」
RL:それは、ハンバーグを食べさせられている時の映像だ。
道杓:うわぁ!
綾部トキ:「どうやら相当この思い出は大事だったようだな」そこだけより鮮明に映っているんだな。
道杓:ハッとなって口に手を当てて、一筋の涙を流します。
綾部トキ:ちらっと頬に流れてる涙を見て、前を向く。「しかし、どうする? あと何時間かあとにはまたリプログラムが終わる。そうすれば、このアザミってヤツはまた殺戮兵器に戻るぜ」
RL:アザミの意識体“Ghost”は天才の手によって生み出されたものである。その本能“Program”を書き直すのは、容易なことではない。それこそ、神の技術“Divine work”が必要だろう。
綾部トキ:そこで呟く。「そう、つまり生まれながらのAI……そして彼女がそれを望んでいないのは、あの父親を殺した時の顔からも想像はつく。だがな、もしなにもできないというのなら、いっそのことここは爆破なりなんなりをして、アザミを葬るのが――」
道杓:「いや」と遮って「必ず助ける!」と言って《タイムリー》を使います。アザミの記憶プロテクトを解除するために造っていたハッキングプログラムで、データを書き換えます。
ウェブゴースト――つまり、人の心というものは、一人一人違うものであるらしい。それは精神波長から証明されている。
その波長に完璧に対応する、いわば鍵――それがこのプログラム。
鍵は次々と鍵穴に入り、扉を開けていく。その中にある悪いものは消し去り、良いものは育てる。
そして、周囲のモニターには、杓の笑顔が溢れだした。
綾部トキ:「へへ、楽しそうじゃないか」
RL:そして、声が響きだす。「たあ、あーん!」
道杓:うわ、消去したい。
RL:「おいしい?」「もっと食べたい?」「じゃ、おいしいんだね!」
道杓:データを書き換えながら「戻れぇ!」と叫んで最後の画面まで笑顔で埋め尽くした。
RL:それまで、耳障りな重低音を鳴らしていたギガトロンが急に静かになる。過度な容量の処理を放棄したらしい。そしてゆっくりと、ウェブゴーストであるアザミが目を開く。「たあ?」
道杓:「アザミ? アザミなのか?」
RL:「たあ!」
道杓:「よかった……」と言って泣き崩れます。
RL:「たあ、泣いてるの? どっかいたい?」
道杓:「ううん、違うんだよ、アザミ。嬉しくて泣いてるんだよ」
RL:「うれしくて泣くの?」
道杓:「いつかわかるさ」
RL:「じゃ、わたしも泣くー」そう言って、画面の中でアザミが無邪気に泣きだした。
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