Tokyo N◎VA The Detonation 「A thistle」



Opnin`1  強襲
SP:綾部トキ
シーンタロット:摩耶蠍(正) 突発的な事件

けたたましく鳴り響くアラームに、視界を赤く染める非常灯。
軌道から墜落してきたという敵性戦力に対するために、綾部トキは既に自らの半身である機体のコックピットに納まっていた。
「なんだ? 今すぐ行かなくていいのか!?」
いつまでも待たされるのに痺れを切らしたトキが、無線に声を張り上げる。それに対するオペレータの返事は実に冷ややかだった。
「現在、先行部隊が追撃しています。まだ待機を」
「おい、こっちはもう準備が出来ているんだぞ!」
苛立たしげなトキの怒号が、コックピットの中に響き渡った。


RL:では準備が出来ているトキ、自己紹介を。

綾部トキ:オレの名前は綾部(アヤベ)トキ。軍内では、“Colorless flash”というハンドルで通っている。所属は日本国関東方面軍第十二師団二○三連隊――通称N◎VA軍ってヤツさ。今はN◎VA軍のエースパイロットをやっている。
スタイルは、アラシがキーでカゼがシャドウ、クグツがペルソナ。
ウォーカーのヴァローナを愛機としている。これを、オレはローザと呼んでいる。コイツは、N◎VA軍の、ある機能を試すための試験機だ。オレはコイツに適性があって、パイロットをしている。ちなみに、その機能だが、あのタケミカヅチにも使われているエネルギー源をコイツにも応用しているんだ。それで、コイツは亜光速で行動出来る。つまりは瞬間移動だな。もっとも、データは〈スピードスター〉だから、1アクトに1回きりだけどな。
そのテストパイロットとして、ローザとこのオレ、トキは選ばれたんだが、そのテスト中にAIが誤作動を起こしたんだ。その時に、ローザがこのヴァローナのスピードに潰されてしまったんだ。

RL:ちょい待ち。ローザは人間? ウォーカーではなく?

綾部トキ:ああ、ええと……今のは、人間だ。人間のローザが、AIの誤作動による事故で死んだんだ。

RL:ローザというパイロットがキミの相棒だった、と?

綾部トキ:そういうことだ。その事故は、亜光速移動に耐えかねたAIがミスってやっちまったものだと言われている。ローザのことも言っといた方がいいのかな?

RL:キミは、彼女の名でウォーカーを呼んでいる、と。

綾部トキ:ああ。オレの認識としちゃ、コイツがローザの墓場なのさ。だから、オレはコイツに乗っていればローザと一緒にいるんだ。

RL:彼女との関係は? 恋人?

綾部トキ:そろそろ恋人って感じだった。オレはまだその時、15だった。ローザはオレの3才上だったから、憧れの先輩だったんだ。ま、そんなオレももう、28才さ。その後、荒れに荒れたがな、仕事として軍人をこなしているのさ。

RL:なるほど。

綾部トキ:髪が白いのは、ドラッグの副作用だ。亜光速に耐えるためのな。ローザは白い長髪だった。オレは短髪だ。

RL:了解。取得しているコネの報告を。

綾部トキ:とりあえず、そのローザには【生命】で持っている。キャストのコネは、道杓を【外界】で取得した。

RL:仕事上の関係と。シナリオコネは、天津御中。軍の内部でも噂になっているストリートのフェイトだ。

綾部トキ:なら、【外界】で貰うか。

RL:では、オペレータから、現状が報告される。「ターゲットは降下迎撃を行った宇宙軍によって、エリア13に誘導されました。降下した部隊との連絡は、現在断絶しております。スクランブル」

綾部トキ:なに? 緊急発進(スクランブル)だと?

RL:オペレータが矢継ぎ早に情報を示し、トキの相棒がそれを整理していく。エリア13――房総幹線道の外れに墜落したヴィークルは沈黙を保っている。しかし、それならば何故友軍からの通信が途絶えたいささか不思議ではある。

綾部トキ:「通信が途絶えた?」いったい何が起こっているんだ?

RL:そう茫然と呟くトキの目の前、ローザが示すモニターの向こうで、発進ランチのハッチが開き、シグナルがブルーに変化した。

綾部トキ:「よし、行くぞ! 発進!」

RL:指定されたポイントには、問題なく到着する。

綾部トキ:「ここか……」で、どんな感じになってるんだ?

RL:砕けて拉げた無数のヴィークルとウォーカーが、其処ら中に転がっている。その多くは、日本軍のものだと認識できる。

綾部トキ:何? 「クッ――、これは!?」

RL:その残骸を踏みつけるのは、一人の少女。

綾部トキ:残骸を踏みつけている少女、だと!?

RL:その表情はまだ陰になっていて、見えない。少女は、その小さな肩に背負うように、斬機剣の刃を構えている。その刃の赤は、けしてウォーカーの整備用オイルだけの色ではない。血の色が混じっている。

綾部トキ:「チッ、なんだ、とんだバケモノか!」そっちに向かってみる。

RL:では、少女が振り返ります。すると、少女は悲しそうな表情を見せます。さらに、その面影は、トキに見覚えがある。

綾部トキ:ん? 無いはずだ。そんな少女に、見覚えなんてないぞ?

RL:そう、例えば、ローザがトキと出会う前の少女だったら――というような雰囲気がある。

綾部トキ:なんだと? 「――ローザ?」

RL:少女は悲しげな視線を向けたまま、トキに斬機剣を向ける。ウォーカー用の剣が、重苦しい音を立てて、ローザに対して振り下ろされる。

綾部トキ:一瞬、気を遠くにやっていたが、ハッとして避ける。

RL:一度目の回避。しかし少女はローザのとっかかりを掴み、肉薄する。

綾部トキ:ほう。「クッ――。クソ、ウォーカーの戦いに慣れているのか?」

RL:そのまま少女はローザの壁を垂直に駆けあがって、コックピットを目指してくる。剣を真直ぐに構えて。

綾部トキ:「やられる――!?」がむしゃらにローザを動かして、振り落とそうとしよう。

RL:では、少女はバランスを崩して、一旦地に降り立つ。

綾部トキ:よし! そこ目掛けて、ローザの拳を叩き付ける。

RL:剣を必死に振り抜こうとする少女。しかし、その刃は地面を穿ち、抜けなかった。

綾部トキ:頭の中で、チャンスと思いつつ、手が勝手に、ローザの腕を止める。

RL:止められた腕を見て、少女は不思議そうな表情をしている。

綾部トキ:「オレは何故今、手を止めた……? アンタは……お前はいったい何者だ?」

RL:少女はその後、ローザのカメラアイにとても悲しそうな目を向けて、そして黙ったまま爆発する。

綾部トキ:爆発!?

RL:爆発の直前にアウトロン。さらに、爆発によってIANUSが焼き切られている。

綾部トキ:「何!?」それは、見てわかるんだな?

RL:アウトロンしたことも、IANUSが焼き切られていて、データが抹消されたこともわかる。アウトロンで残された義体はそのまま転がっている。

綾部トキ:地面にローザの手を着く。「逃げられたか……」

RL:ローザの体内(コックピット)で呆然と呟いたトキの声だけが、戦場に響いた。トキにPSを渡そう。内容は、N◎VA防衛だ。

綾部トキ:ほう。









Opnin`2   Who are you?
SP:道杓
シーンタロット:妖(逆) 宿命

そこは、静かな工房だ。主が作業を開始しなければ、音はなく、御伽噺に語られる小人が来たことなど、一度もない。だが、今は誰もいないはずの工房の奥から、物音がした。
ちょうど、昼食を取っていた杓は、隣の部屋から変な音が聞こえたのを不思議に思い、食事を中断して、確認に向かった。


RL:カタン、とスプーンが置かれた。では、杓、自己紹介を。

道杓:ボクの名前は、道杓(タオシャク)です。両親が全身義体技師でした。それで幼い時から、全身義体技師の仕事を見てきたので、15才で才能を開花させ、天才義体技師として名を馳せています。
現在19才の男の子。スタイルは、タタラマネキンニューロで、ペルソナもキーもタタラです。
受けた仕事は、ちゃんとやります。あまり断りません。

綾部トキ:結構、厄介な仕事を……。職人気質だな。

道杓:そうですね。

RL:取得したコネは?

道杓:綾部トキさんを、【理性】で頂きました。

RL:了解。では、杓が工房に入ると、そこにあったのは、いくつかの、全身義体。完成したものと未完のものとが入り混じっているが、誰かが入っているものなどないはずである。その中で一つだけ、他のものとは明らかに趣向が違うものがある。確か、半年程前にウェブで見つけた設計図から造ったものだ。その義体が、無垢な瞳で杓をまじまじと見返していた。

綾部トキ:こいつ、動くぞ。

RL:杓のシナリオコネは、杓を見返している少女のもの。推奨スートは【感情】で。

道杓:はい。

RL:義体の瞳は、何も言わずに杓を見ている。

道杓:気のせいかな、と思って手をブンブンと振ります。

RL:義体は、その手の動きを追って、首を振る。

道杓:「う、動いた!?」

RL:「うん」とその義体は音を発した。

道杓:「こ、声を発しただと!? ど、どうなっているんだ?」

RL:その義体は、キョトンとした表情で杓を見返している。

道杓:なんて言おう……。

RL:「お」と言葉が漏れた。

道杓:「お?」と首を傾げます。

RL:「おなかすいた……」

道杓:「え? じゃ、ちょっとこっち来て!」とりあえず、さっきまで食事をしていた所に招き入れます。

RL:その義体は、杓に腕を引かれてそちらへ向かった。その動きはどことなく、ぎこちない。例えば、まだ自分の体に慣れていない、赤ちゃんのような感じにも思えた。

綾部トキ:きっと、初めての義体はみんなそんな感じなんだろうな。

RL:杓のPSは、目の前の少女の面倒をみることだ。

道杓:わかりました。





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