Tokyo N◎VA The Detonation 「A thistle」



Research1  指令
SP:綾部トキ
シーンタロット:車鞍(逆) 感情の制御が上手くいかない

トキは現在、N◎VAの中で最も重圧が掛かっているであろう場所の一つ、和泉大佐の執務室に出向していた。
「では、報告を聞かせてもらおうか、綾部曹長」
和泉大佐の言葉に敬礼で答えたトキは、決してその目を合わせようとはしなかった。


綾部トキ:先行部隊が壊滅したという報告をする。「敵と見られる少女と接触し、その少女、おそらく全身義体の少女には逃げられました」

RL:トキの報告を聞いて和泉大佐は「なるほど」とだけ答える。「ご苦労。では、君は通常任務に戻りたまえ」

綾部トキ:「ハッ!」え? じゃ、後ろを振り向こう。通常任務ってことは、何をしろと言われたんだ?

RL:巡回やデスクワークだな。

綾部トキ:つまり、ローザから降りろということか。

RL:基本的には、乗る必要がない。では、ここで【理性】の制御判定を。失敗したら、和泉大佐に反論する。

綾部トキ:わかった。ここは失敗させてもらおう。クラブの2を出して失敗する。

RL:では、トキの内側で、そんなことはあり得ないという声が響き渡る。この状況は軍として明らかに間違っている。間違ったことは、正さなければならない。軍人として。

綾部トキ:後ろを向きかけていたが、また和泉大佐の方へ振り返る。「どういうことですか? 大佐」

RL:「何がかね?」

綾部トキ:これは、オレとしては、やることがあんだろ、って言えばいいんだな。「目標はまだ撃破出来ていません。N◎VAの治安を守るためなら、敵と接触した私はその少女の義体に入っていた奴を捜査に当たるべきではないのですか?」

RL:トキの言葉を、目を閉じて静かに聞いていた和泉大佐は、ゆっくりと口を開く。「今回の件だが、あの少女は軌道からヴィークルに乗って降下してきた。その際、衛星軌道上に配備されていた部隊は全滅、さらに我が隊の一部隊も撃破された。この件は宇宙軍の失跡であり、本国は宇宙軍に衛星軌道の配備を強化せよとの指示を出し、その責務は全て宇宙軍が負うこと、我々関東方面軍に関しては、通常任務に戻られたし、というのが決定された」

綾部トキ:なるほど……。「じゃあ、つまりは――」

RL:「この件は宇宙軍で管理するということだ」

綾部トキ:「オレ達は蚊帳の外ってわけですか!?」

RL:それには、含み笑いをするだけで、和泉大佐は何も答えない。

綾部トキ:「敵はN◎VAにいるんですよ!」たぶんだが。

RL:「その確証はない。それに既に少女の戦闘力は排除された。綾部曹長」

綾部トキ:それには何も答えずにじっと見ている。

RL:〈社会:N◎VA軍〉でスペードの6を出し、団体社会による達成値上昇を足して、達成値は24。「君は、上官にそう意見出来る立場ではないだろう。残念だ。君のウォーカーはこちらで接収させてもらう。君はしばらく有給休暇を楽しみたまえ」

綾部トキ:「アンタは何を!?」ドン、と机を叩く! 「その少女を前にして生き残れたのは、オレのローザだけなんだぞ!」

RL:「冷静でないアラシに何が出来る? 頭を冷やしたまえ。君に休暇を与える。これは、命令だ」

綾部トキ:「頭を冷やせだと! オレはいつだって冷静だ!」

RL:「そうであるならば、上官に対し激昂した表情を見せないものだな。下がりたまえ」

綾部トキ:それに対しては、グググ――と顔を元に戻す。去っていく前に呟こう。「上官は、光の速さで移動する時、冷静になって行動したことがありますか?」

RL:「残念だが、私はクグツだ。カゼではない」

綾部トキ:なるほどな。じゃ、オレはそのまま扉を出ていく。

RL:いつも通り静かな音を立てて自動ドアは閉められた。



舞台裏

RL:舞台裏判定になります。杓が現在調べられることは、少女について。

道杓:ああ、なるほど。なにで調べられますか?

RL:〈社会:N◎VA〉もしくは〈コネ:少女〉。

道杓:あ、そっか。コネがあるのか。あれ? スートが合わない?

RL:杓には情報をあまり準備してないから、回しても大丈夫。

道杓:じゃ、回します。









Research2  What is this?
SP:道杓
シーンタロット:婆娑羅(逆) 嘘吐き

義体の少女の手を引いて食事の前に連れてきた杓だが、少女はそれを見て、全く訳のわからないといった表情をしている。どうやら、目の前のものを食べ物と認識していないらしい。
「どうしたの、食べないの?」
「これ、なに?」
気遣わしげに訊ねる杓に、義体の少女は無垢な瞳を返す。
「おなか、すいてるんだよね?」
その杓の問いかけに、義体の腹部が低い音を立てて少女の代わりに答えた。
困惑する杓は、自分でスプーンを持ち、少女の口に食べ物を運ぶのだった。


道杓:食べ方がわからないんですよね? それなら、適当にスプーンですくって「はい、口あけて」

RL:「んあー」

道杓:押し込みます。「で、口を上下に動かして」

RL:「あぐ」

道杓:「で、それをずっと続けて」

RL:「あぐあぐあぐ――」

道杓:いつになったら小さくなるのだろうか、これは……。適当に頃合いを見計らって――え? 飲みこみなさいってどういうの!?

綾部トキ:飲みこみなさいって言ったらいいんじゃないか。

道杓:「飲みこみなさい」

RL:「ぅくん――」と喉を鳴らして、少女は口の中にあったものを嚥下した。

道杓:おお。

綾部トキ:確実にN◎VAなら、ポケットロンで正しい食べさせ方とかいう絵本があるよな。

道杓:あるんですか!?

RL:ある。ありとあらゆる情報はウェブに存在している。

道杓:へー!

綾部トキ:絶対、どうやって食べたらいいかわからないこどものために、ってあるよな。

RL:少女はじぃーっと皿を見つめて「これ、たべもの?」と訊く。

道杓:「ああ、食べ物だよ。おいしい?」

RL:「おいしいってなに?」と舌足らずな声で少女は語る。

道杓:うわー、かわいい。「もう一回、これ食べたい?」

RL:「たべるー」

道杓:「じゃ、それをおいしいっていうんだよ。はい、食べなさい」と言ってもう一回スプーンを。

RL:「あぐ」これまで接して分かった事だが、どうやらこの少女、知識が三歳児程度のものしかないらしい。一部、三歳児でも著しく知識が足らない部分がある。例えば、感情、など。

道杓:はい。

RL:「もっと食べる……」と少女が催促する。

道杓:じゃ、次はイタズラというか、キムチみたいな辛いものを食べさせてみます。「これ、どうかな?」

RL:それを口にした瞬間、少女は咳き込んでそれを必死に吐き出そうとする。「け、けふっ!?」

道杓:「ああ、ごめんね!? はい、水飲んで!」

RL:「の、飲む?」

道杓:ムリヤリ口に流し込みます。

RL:その瞬間に、少女は今まで食べたものを全て嘔吐する。

道杓:ああ……。辛いものはダメか。

RL:少女は自分が吐いたものを見て、どうしていいか分からなそうな、怯えてるような表情になる。

道杓:とりあえず、2秒で布きんを持ってきてキレイにします。「ごめんね、なんでもないんだ、今のは忘れて!」と言って、おいしいと言ってくれたほうを口に入れます。

綾部トキ:今、亜光速で移動したぞ、コイツ。

RL:差し出されたものは素直に食べる。「おこらない?」と少女は訊いてくる。

道杓:「怒らないよ」

RL:「うー」

道杓:「いや、むしろボクのほうこそ、ごめんね」

RL:「ごめん?」

道杓:うーん……。「ところでキミ、どうして動いてるの?」

RL:「動ける、から?」

道杓:「まぁ、そうだよね」

RL:少女は上目づかいに杓を見上げて、「動いちゃだめ?」と訊き返す。

道杓:「いや、全然。というか、なんというか、動いてちょっと珍しいなと思ってさ」

RL:「めずらしい?」

道杓:あれ? これってもしかして、全部言葉の説明って必要なのか?

綾部トキ:そろそろ名前を訊いたらいいんじゃないか?

道杓:名前? 「キミ、名前あるの?」

RL:「なまえ?」

道杓:「名前。ボクはどうやってキミのことを呼んだらいいのかな?」

RL:少女は一瞬目を瞑り「アザミ」と声を発する。

道杓:「アザミ? ああ、アザミちゃんか」

RL:「だと、思う?」

道杓:「まぁいいや。ボクはアザミって呼ぶよ。ええとね、ボクは道杓っていうんだ。杓でいいよ」

RL:「し……やく?」

道杓:「じゃあ、タオでいいよ」

RL:「ター……オ?」

道杓:「ターオ」

RL:「たあ」

道杓:「……たあ、でいいや」

RL:「たあ!」と少女は嬉しそうに杓の名前を呼ぶ。

道杓:うわー。これ以外に調べたほうがいいですか?

RL:好きなように。

道杓:とりあえずアザミちゃんについて調べます。〈交渉〉と〈コネ:アザミ〉を組み合わせて……。

綾部トキ:【感情】が6、カードが8で、コネのレベルを足して15だな。

RL:アザミという名前である。義体の制御に慣れていない。AIであり、自己の記憶にプロテクトをかけているようだ。彼女が入っている全身義体の設計図はウェブから手に入れた。

道杓:自己の記憶にプロテクト?

RL:アザミの行動からそれが分かる。例えば、たまに不自然に言葉をつっかえたりしている。

綾部トキ:なるほど。本来なら、このくらいの子供に分かるような単語が分からない訳だ。

RL:思い悩む杓に対して、アザミは「たあ!」と無邪気に声をかけた。



舞台裏

綾部トキ:何が調べられる?

RL:襲撃者についてと、軍の動向だな。

綾部トキ:ふーむ。ローザについて気になるから、軍の状況かな。きっと軍が動くとなったら、オレも駆り出される。軍の状況は何で調べられる?

RL:〈社会:軍事〉〈社会:日本〉〈社会:軌道〉

綾部トキ:軍事に日本に、軌道か!?

RL:日本軍の情報管理だからな。このくらいだろ?

綾部トキ:よし。銀の目を使って、〈社会:軍事〉で【理性】の15だ。

RL:現在、襲撃者に対してN◎VA軍及び本国は行動を見せていない。この件に関して、宇宙軍が自分の管轄を主張した。つまりは、軍内部の覇権争いだ。これによりN◎VA軍は行動を制限されている。

綾部トキ:クソッ、内部争いなんかで!

RL:さらに日本本国には、もう二度と襲撃はないと踏んでいるかのような行動が見える。

綾部トキ:それは何か情報を掴んでいるのか、高をくくってるだけなのか……。日本の動きはいつも怪しいものだな。

RL:お前の国だよ。

綾部トキ:イエス、マイホーム。









Research3  不審な協力者
SP:綾部トキ
シーンタロット:黒幕(正) 警告

和泉大佐から有給休暇を命じられて、トキは行きつけのバーに来た。ストリートの寂れた、だけども酒は中々に美味いバーだ。
「チクショウ」
酒を煽りながら、トキは呟く。何度も何度も、やり切れない気持ちを吐き出すように。
そんなトキの隣に、一人の男が腰掛けた。


RL:「随分と荒れてるね、綾部トキ曹長」その男はトキに声をかける。

綾部トキ:「あぁん?」そいつの顔を見る。

RL:その顔をトキは何度か、軍内の雑誌で見た。ストリートで度々話題になっている天津御中というフェイトだ。

綾部トキ:ちょっと怪訝な顔で上から下まで見て「アンタ、天津御中か?」

RL:「こんにちは。その通りだよ」

綾部トキ:「なんだ? ストリートの探偵さんが、N◎VA軍人と一緒に呑もうってか?」グイッと酒を煽る。

RL:「ま、それもいいかな。でも僕はお酒はそんなに得意ではないんだけどね。それよりも、気付いているかい、曹長殿?」

綾部トキ:「なんのことだ?」

RL:「この事件、まだまだ裏があるよ」

綾部トキ:「なんのことかな」と言って、酒を煽る。

RL:御中は、リンクスからトキのIANUSに直接声を送る。周りに気付かれないように。

綾部トキ:なるほど。

RL:『あの襲撃者に対して、軍の行動は緩慢過ぎるとは思わないのかい?』

綾部トキ:『知らねぇさ。N◎VA軍っていうのは、仲間を弔うなんて意識はねぇんだろ』

RL:『まぁ、それもあるのかもしれないけれども』と御中は少し口を濁す。『協力してあげようか? あの“大佐”にウォーカーを取られて、何も出来ないんだろう』

綾部トキ:酒を飲んでグラスを高く上げてたのをギロリとソイツを見て、カンッと置く。「いらん」

RL:「連れないね」

綾部トキ:「アンタの噂はよく聞くぜ」

RL:「そんなに有名になった覚えはないんだけどね」

綾部トキ:「オレもN◎VA軍人なんでね。アンタみたいな訳のわからないフェイトに、N◎VA軍人が協力してくれと頭を下げると思っているのかよ」

RL:「はぁ……。プライドというものか。そのせいでキミが今動けないということを忘れずにね。何かあれば、ここに連絡をくれればいいよ」と御中はトキに、アドレスを渡してくれます。御中のコネだけど《社会:軌道》が情報技能となっている項目に関して有利と見なし、+3修正が入る。

綾部トキ:わかった。天津御中の顔は見ずに、そのまま酒を呑み続けよう。

RL:「今回の件、N◎VA軍の古い実験の代償だよ」と最後に呟いて、彼は席を立つ。

綾部トキ:ピクッと眉を動かして、立とうとした天津御中に対して声をかける。「なんの実験だ? いつのことだ?」

RL:「オペレーション――いや、まだ早いね。It gives the truth to the searcher.本当に知りたいのであれば、自分で探すことだ」

綾部トキ:「ふん。そうかい」と言って、天津御中から目を離そう。

RL:「困ったらいつでも連絡をくれ」

綾部トキ:「わかったよ」

RL:では、御中はそのまま立ち去る。

綾部トキ:このままやってもテンポが悪いな。情報収集を回しておく。空になったコップを見て「ローザ……」と呟く。

RL:そのコップの中で、氷がカランと鳴った。何も分からない。今はそれがただ歯痒かった。

綾部トキ:苦々しい顔をしておこう。



舞台裏

道杓:アザミがどこから来たのかを調べます。〈コネ:アザミ〉で11。

RL:何も分からない。

道杓:とりあえず、表でちゃんと調べておきます。





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