Tokyo N◎VA The Detonation 「A thistle」



Research4  I want!
SP:道杓
シーンタロット:傀儡(逆) 宿命的、あるいは自発的な苦しみ

アザミが来てから2日程の時間が経った。彼女は教えたことは、それなりに素直に聞いてくれて、それなりにちゃんと成長してくれているようだ。そんなアザミが道杓のためにお茶を淹れてくれた、とある午後、アザミが急に玄関の方を振り返って工房の奥へ逃げ出した。
それと同時にチャイムが鳴り響く。


道杓:え? アザミのほうを気にしつつ、玄関へ行きます。

RL:「こんにちは、“渡し屋”です」と声が響きます。彼は杓が造る義体の材料を届けてくれたり、完成した義体を運んでくれるカゼだ。「前に言われた義体用の骨格、持って来たよ」

道杓:「ああ、そっか。そうだったね。ありがとう。助かったよ」

RL:「重いから気をつけろ。でだ、売りに出す義体、そろそろ溜まっているか?」と“渡し屋”は工房の方に足を向ける。

道杓:「ああ、出来てるよ!」と言って手をかざして、ボクだけ工房へ向かって持ってくる。

綾部トキ:“渡し屋”の足を止めるってことか。

RL:「あ、ああ――別にいいけど。いつも、重い、重いって文句言うのに……」“渡し屋”は不機嫌な顔になる。「まぁ、いいけどさ、それでいいっていうんなら」

道杓:ということで、一人でがんばって運んできます。

RL:杓が奥に行った瞬間、ガタンッ――という大きな音と「きゃあ!?」という悲鳴が玄関の向こう側から聞こえてきた。

道杓:あれ? なんで?

綾部トキ:ん?

RL:工房の中を見れば、窓が一つ開いてカーテンがひらひらと風になびいていた。

道杓:ど、どうしましょう?

RL:「な、なんだ?」と言いながら、“渡し屋”が音のした方に向かう。

道杓:義体を床に置いて、玄関の方へ向かいます。というか、飛び出します。

RL:すると、アザミが“渡し屋”のヴィークルの下敷きになっていた。

道杓:ええー!?

RL:“渡し屋”は、「なにやってんだ、この子!?」という感じでアザミを救出しようとしている。

道杓:「うわっ、どうしたんだ、アザミ!? なんてことだ!」ボクも手伝います。

RL:“渡し屋”が肩を震わせて「タオ、この子、お前の子供か?」

道杓:「ち、違うよ! 子供なんかじゃないよ! ていうか、誰の子だ!?」

RL:「ちゃんと、しつけろ! 危ないだろうが! ヴィークルってそれなりに重量があるんだぞ!」と“渡し屋”が怒鳴り散らす。ちなみに、アザミは端っこでしょんぼりとしながらも、“渡し屋”のヴィークルを真っ直ぐに見ている。

道杓:「いや、悪い。まだ、そのなんて説明すればいいのかわからないけど、まだ拾って間もないんだ。ごめん、ちゃんとするから、な? 今回は許してくれよ」

RL:「迷子? だったらイヌに頼めよ」

道杓:「そういう感じでもないような気がするようなしないような気がするんだよな――」と言葉を濁します。

RL:「ったく――」と“渡し屋”はアザミの方に目を向ける。「それにしても、あの子、なんだ? ヴィークル好きなのか?」アザミはさっきから変わらず、ヴィークルを一心不乱に見ている。その瞳は心成しか、キラキラしている。

道杓:こんな幼い子に乗ってみる、なんて言えないしなぁ。どうしようかな? 「珍しいね、そんなに興味を示すなんて」と訊いてみます。

RL:アザミは跳ね返るような声で「これ、なに!?」と杓に訊き返す。「まるいのついてるよ! それにほそながいのも! え! これなにやるやつ!? なんなの、これ!?」とアザミはまくし立てる。

道杓:「ああ、これは……速く移動出来るやつだよ」

綾部トキ:カゼにケンカ売ってるな。

道杓:今、家の前で、ヴィークルがあるってことはけっこう広いスペースがありますよね? “渡し屋”さんのほうを見て「ちょっと、走ってみれば?」と言います。

RL:「……乗せろっていうことか?」

道杓:「いや、乗せなくても、とりあえずどんな感じか見せてくれると嬉しいな」

RL:“渡し屋”は頭を掻きながら「じゃあ、ちゃんと捕まえてろ」と言って、アザミを抱き上げて杓に押し付ける。「危ないからな」

綾部トキ:全身義体って持ちあげられるのか?

道杓:ええ!?

RL:「さてと」と言って“渡し屋”はエンジンをかけた。重々しいヴィークルのエンジン音が辺りに鳴り響く。心臓を鷲掴みにするような振動が、アザミにも伝わっているようだ。“渡し屋”の手がアクセルを開く。その瞬間に飛び出すヴィークル。アザミはそのスピードに追いすがるように、必死に視線を彷徨わせていた。そして、そのヴィークルに対して、物欲しそうに手を伸ばしていた。軽く動かして“渡し屋”はヴィークルを止める。「これがヴィークル。カゼの魂だ」その言葉に、アザミは「たましい?」とくりんと杓の方に目を向けた。

道杓:ええ? 難しい言葉ばっか……。「んー、大切なものだよ」と適当に言います。

RL:「違う! ヴィークルは――!」と“渡し屋”が杓に抗議を怒鳴り散らす。

道杓:「ああ、はいはい」と聞き流します。

RL:そしてヴィークルのことを散々まくし立てる間、アザミはその様子を尊敬の眼差しを向けて、懸命にそれを覚えようとしていた。

道杓:うわー……。杓は右から左って感じで聞き流します。

RL:言うだけ言って“渡し屋”は咳払いをする。「で? 義体をさっさと寄越せよ。――疲れた」

道杓:「ああ、そっか。そういうことだったね。ちょっと待ってて」ととりあえず義体を持ってきます。

RL:“渡し屋”はそれを受けとって「はい、確かに。報酬はいつものとこに振り込んでおいてくれ」と言ってそのままヴィークルに乗って地平線の彼方まで消えていった。それを見えなくなるまで見ていたアザミは、杓の裾を引き「ヴィークル……」と物欲しそうな声をあげた。

道杓:え、ヴィークル……? 「と、とりあえず、探してはみるよ」と言葉を濁します。

RL:ジト目でアザミは杓のことを見ていた。



舞台裏

綾部トキ:襲撃者だけか。社会技能はなにでいける?

RL:N◎VA、軍事、軌道。

綾部トキ:軍事でいけるのか。スペードのジャックを出して、銀の目を使用して、達成値は19になる。

RL:軌道からN◎VAに向かって突貫してきた。なお、衛星軌道上からの地上に向けたレーザーの狙撃も確認されている。

綾部トキ:軌道上からN◎VAにレーザーを撃ってきただと? 目標はわかるのか?

RL:日本やN◎VAだと推定出来る。

綾部トキ:なるほど。

RL:襲撃者は、オリジナルの全身義体に入ったAIである。この全身義体の設計図は一時期ウェブに流出した痕跡がある。ウェブの痕跡をたどると、設計図の製作者はとあるタタラであることが判明した。









Research5  個人的な頼み
SP:綾部トキ
シーンタロット:裂牙(逆) 自らが招いた障害

ストリートの雑踏の中、トキは苛ついた様子でコートに手を突っこんだまま歩いていた。情報はなかなか明らかにならない。日本軍の情報機密の高さは、流石に優秀だ。誇るべきなのかどうかは、今は分からなかったが――。


綾部トキ:「忌々しい限りだぜ」と呟こう。さて、どうするかな。天津御中に頼るか? 「そろそろあのフェイトとかいうヤツに当たってみるかな。気は進まねぇが」と言ってポケットロンを操作する。天津御中に連絡を取ってみよう。

RL:「もしもし」

綾部トキ:「綾部トキ、と言えばわかるかな?」

RL:「ああ、こんにちは」

綾部トキ:「オレ個人として頼みがある」

RL:「どうぞ」

綾部トキ:「今オレが調べている事件で、裏から糸を引っ張ってるヤツを調べてほしい」

RL:「ああ、いいけどもなかなかに難しいよ。日本軍の方で情報規制がかなりされている」

綾部トキ:「そうかい。いや、できねぇならいいよ」

RL:「いいや。出来るけど?」

綾部トキ:「じゃ、頼むさ」

RL:「分かった。ただ、命知らずだね、キミも」

綾部トキ:「N◎VA軍の人間に、命が惜しいヤツなんているかよ」

RL:「なるほど」

綾部トキ:「いいんだぜ。怖くなったんなら、捜査はやらなくても」

RL:「そこまで臆病でもないさ」

綾部トキ:「そうか。了解」と言って、情報収集しようか。とあるタタラについてN◎VAで調べられるのか?

RL:出来るよ。

綾部トキ:〈社会:N◎VA〉で達成値は14だな。

RL:元日本軍の研究者であり、兵器製作の第一人者であった。しかし、十年ほど前に失踪している。現在の居場所は不明である。その居場所は常人には特定出来ないであろう。

綾部トキ:「どういうことだ?」

RL:「規制が厳しい、と言ったろ。当時色々な兵器を開発してたみたいだよ。無人戦闘機やら超高速ウォーカーやら」

綾部トキ:「へぇー。超高速ね」ローザは亜光速だ。

RL:「軌道へ出た時、日本軍からの扱いは完全なる失踪。彼の追跡捜査はかなり躍起になってやったみたいだけども、結局見つからず終いさ」

綾部トキ:「日本軍が調べて見つからなかったと」オレには連絡が来なかったな。捜査任務だからか?

RL:「彼がどうしているのかは、今のところ分かってないよ」

綾部トキ:「しかし、兵器製造の第一人者だと? しかも日本の。そんなヤツがこの事件の裏から――いったいなにを?」

RL:「まだ分からない、というのが一番的確かな」

綾部トキ:「そうか。ありがとよ」

RL:「どういたしまして」

綾部トキ:「報酬はどこに振り込めばいいのかな?」

RL:「いや、別にいいよ。これは個人的に動いてるだけ、興味本位さ」

綾部トキ:「フェイトってヤツらはその興味で、軽く命を失っちまうもんだぜ。気を付けな」

RL:「ご忠告、ありがとう」

綾部トキ:電話を切ろう。さて、十年前に失踪したタタラか。「散々兵器を造って、なにも知らずに遁走したってわけか。会ってみたいもんだな」ちょっとニヤリとしよう。

RL:静かに笑うトキ。だが、その眼前の闇はまだまだ深かった。



舞台裏

道杓:回しておきます。

RL:了解。





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